育休後の退職は「ずるい」より大損!生涯年収8307万減の罠

育休後の退職は「ずるい」より大損! 生涯年収が8307万円も減る罠とは?

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育児休業後の退職を考えたとき、「ずるいと思われたらどうしよう」という罪悪感に悩んでいませんか。

しかし、本当に恐れるべきは周囲の評判ではなく、正しい知識なしに決断することで生じる経済的な損失かもしれません。

この記事では、政府統計などの客観的データに基づき、育休後の退職にまつわる誤解を解き、あなたが後悔しないための判断材料を提供します。


育休後の退職は「ずるい」より「大損」が真実な2つの理由

タイトルで提示した「ずるいより大損」という結論について、その根拠となる2つの核心的なデータを最初に解説します。

【理由①】生涯年収で8307万円の損失が出るから

育休後の退職を考える上で、最も重要な判断基準となるのが、キャリア中断がもたらす経済的なインパクトです。

感情的な罪悪感よりも、この客観的な数値をまずは直視する必要があります。

キャリアパスによる生涯年収の違い

まずは、キャリアパスによる生涯年収の違いを見てみましょう。

第一生命経済研究所の試算によると、正社員の女性が30歳で出産退職し、40歳から非正規で再び働き始めた場合、

そのまま正社員として就業を続けた場合と比較して、生涯年収で約8,307万円もの差が生じるとされています[3]

育休後退職による生涯年収の損失を示す関係図
【図解】育休後退職がキャリアに与える経済的インパクト

退職後、正規雇用で復帰できるとは限りません

先の図が示す通り、キャリアの中断と非正規での復帰は、昇給や退職金の面で大きな不利益を生みます。

長期的に見て数千万円単位の「機会費用」となってしまうのです。

もちろん、これはあくまで一つの試算モデルであり、全ての人に当てはまるわけではありません。

しかし、「ずるい」という曖昧な感情に悩む前に、まずはこの客観的な経済的リスクを天秤にかけることが、後悔しない決断への第一歩となります。

【理由②】そもそも「ずるい」は誤解だから。9割は復職する

「育休を取るだけ取って辞めるのは無責任」という考えは、多くの人が抱きがちな罪悪感の源です。

しかし、この考えは政府が示す実際のデータとは大きくかけ離れた、単なるイメージに過ぎません。

「出産直後」の就業継続は今や「多数派」

そもそも、出産を機に仕事を辞める女性は、本当に多いのでしょうか。

この30年間の大きな変化を見てみましょう。

下記のグラフは、第一子を出産した女性が、その1年後どのような就業状態にあるかを示したものです。

「就業継続」の割合(薄い緑と黄色)が年々増加していることが分かります。

第一子出産後の女性の就業継続率の推移を示す積み上げ面グラフ
【グラフ】育休後の就業継続、30年で倍以上に
このグラフの集計データとソース
集計対象: 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」における、第一子出産後の女性の就業パターンの長期時系列データ。

子どもの出生年 就業継続(育休利用) 就業継続(育休なし) 出産退職 妊娠前から無職
1985-89年 5.5% 18.4% 37.4% 35.3%
1990-94年 8.1% 16.3% 37.7% 33.6%
1995-99年 11.2% 13.0% 39.3% 31.3%
2000-04年 15.3% 12.2% 40.3% 26.9%
2005-09年 21.1% 10.2% 40.8% 22.3%
2010-14年 31.6% 10.8% 31.1% 21.2%
2015-19年 42.6% 11.2% 23.6% 17.4%

引用元: 第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況(厚生労働省)[PDF]

このグラフが示すように、第一子出産後も就業を継続する女性の割合は、1985~89年の27.0%から、2015~20年には57.0%へと劇的に上昇しました[7]

今や、仕事を続けることは決して少数派ではないのです。

育休取得者の9割以上は「出産直後には」復職する

では、育休取得者に限定した場合、復職せずに辞めてしまう人はどれくらいいるのでしょうか。

厚生労働省の調査によれば、育児休業を終えて復職予定だった女性のうち、実際に職場復帰した割合は93.1%にも上ります[2]

育休後の復職率と退職理由の比較グラフ
【グラフ】「ずるい」という罪悪感と、9割以上が復職する「現実」
このグラフの集計データとソース
集計対象: 育休終了後の復職率と、出産退職理由に関する2つの異なる政府・民間調査の結果。生データ (1/2): 育休終了後の復職率

性別 実際に復職した者の割合 退職した者の割合
女性 93.1% 6.9%
男性 97.5% 2.5%

引用元 (1/2): 令和3年度雇用均等基本調査(厚生労働省)[PDF] – P8, 表8

生データ (2/2): 出産退職理由(正社員)

退職理由 回答率
家事・育児に専念するため自発的にやめた 29.0%
仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた 25.2%
解雇・退職勧奨等 15.7%

引用元 (2/2): 出産退職の経済損失1.2兆円(第一生命経済研究所)[PDF] – P5, 図表8

男性に至っては97.5%が復職しており[2]、「育休を取得した人のほとんどは、きちんと職場に戻っている」というのが客観的な事実です。

よくある思い込み(神話) データが示す客観的な事実(ファクト)
「育休を取ったら、ほとんどの人が復帰せずに辞めてしまうのでは?」 いいえ、育休を終了した女性の93.1%、男性の97.5%が実際に職場復帰しています。[2]
「仕事を続ける女性は、まだ少数派で特殊な存在なのでは?」 いいえ、今や第1子出産後に就業を継続する女性は57.0%と、多数派になっています。[7]
「復帰せず辞めるのは、最初から計画していた『ずるい』人なのでは?」 いいえ、退職理由で多いのは「両立の難しさ」であり、やむを得ず退職している人が多数です。[3]

【長期的視点】それでも退職に至る「制度の欠陥」

ここまでのデータで「育休を取った方が仕事は続けられる」ことが分かりました。

しかし、専門家のより長期的な分析は、私たちに衝撃的な結果を突きつけます。

【東大研究】育休取得で「復帰後の退職率」が上がる矛盾

実は、①出産直後と②職場復帰後の数年間とで
育休の有り/無しにおいて、退職率が上がる/下がるが真逆になるのです。

東京大学公共政策大学院の研究では、驚くべき事実が示されました。

復帰後の数年間において、
女性が育休を取得すると、復帰後の残業時間は減少する傾向にある一方で、
統計的にはその後の退職率が有意に上昇していたのです[5]

育休取得が残業時間と退職率に与える影響の概念図
【図解】東大研究が示す「復帰後退職」のメカニズム

つまり、育休は「出産直後」の離職を防ぐ命綱である一方、

  1. その後の職場で「やりがいのある仕事を与えられない」といった不利益(=制度の副作用)を被り、
  2. 結果的に数年後に退職を選んでしまう

という皮肉な現実(パラドックス)を、この研究は示唆しているのです。

育休前例が逆に退職を増やすパラドックス

さらに、職場の「育休取得の前例」が、意図せず退職リスクを高める可能性を指摘する研究もあります。

育休取得の前例が退職に与える影響のフローチャート
育休取得の前例が、育休を取らない決断をした人の退職リスクを高める可能性

この図が示すように、前例があることで「育休取得は当然の権利」という意識が強まる一方、

何らかの理由で自分が取得できなかった場合、「この会社では両立は無理だ」と判断し、

復職を諦めてしまう傾向があるというのです[6]


男性の育休後退職と「男女格差の壁」

育休後のキャリアの悩みは女性特有の問題とされがちですが、男性もまた異なる形の困難に直面しています。

その背景には、データが示す圧倒的な「男女格差」が存在します。

取得率と期間にみる圧倒的な男女差

まずは、育休の「取得率」と「取得期間」において、男女間にどれほどの差があるのかを見てみましょう。

育休の取得率と期間における男女差を示すグラフ
【グラフ】男女でこんなに違う!育休の「取得率」と「取得期間」のリアル
このグラフの集計データとソース
集計対象: 男女の育児休業取得率と、主な取得期間に関する2つの異なる政府調査の結果。生データ (1/2): 男女別 育児休業取得率

性別 育児休業取得率(令和6年度)
女性 86.6%
男性 40.5%

引用元 (1/2): 令和6年度雇用均等基本調査(厚生労働省)[PDF] – P15

生データ (2/2): 男女別 主な育児休業取得期間

性別 取得期間 割合(令和3年度)
女性 6か月以上 95.3%
男性 2週間未満 51.5%

引用元 (2/2): 第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況(厚生労働省)[PDF] – P6

最新の令和6年度の調査で、男性の育児休業取得率は40.5%と過去最高になりましたが、女性の86.6%には遠く及びません[4]

さらに深刻なのは取得期間で、育休を取得した男性の約半数が2週間未満であるのに対し、
女性の9割以上は6か月以上取得しています[1]

部門で異なる公務員男性の育休事情

比較的制度が整っている公務員でさえ、組織の文化が取得率を大きく左右します。

地方公務員の部門別・男性育休取得率を示す横棒グラフ
部門によって取得率に大きな差がある(地方公務員の例)
このグラフの集計データとソース
集計対象: 令和5年度における地方公務員の部門別・男性育児休業取得率。生データ:

部門 男性育休取得率
一般行政部門 66.4%
警察部門 46.5%
消防部門 34.0%
教育委員会 31.2%
全体平均 47.6%

引用元: 男性職員の育児休業等の取得促進に向けた取組について(総務省)[PDF] – P1

令和5年度の地方公務員男性の取得率は、一般行政部門の66.4%に対し、
消防部門では34.0%に留まるなど、大きな差があります[8]


後悔しないための円満退職・手続きガイド

ここまで見てきた事実を踏まえ、それでも退職が最善の選択肢だと判断した場合、次に行うべきは「後悔しない」ための具体的な準備です。

ここでは、円満退職に向けた手続きの全体像と要点を解説します。

退職までのロードマップ

まず、退職を決意してから実際に退職するまでの、一般的な流れを把握しておきましょう。

円満退職へのロードマップを示すフローチャート
【図解】円満退職へのロードマップ

この図のように、退職は一つ一つのステップを着実に進めることが、円満な完了への鍵となります。

円満退職に向けたToDoリスト

  • 会社の就業規則(退職に関する項目)を改めて読み返す
  • 直属の上司に、まずはアポイントを取って口頭で相談する
  • 退職希望日と最終出社日の希望を考えておく
  • 引き継ぎに必要な業務内容や資料をリストアップし始める
  • 失業手当の受給資格(雇用保険の被保険者期間)を確認しておく
  • 退職後の健康保険や年金の手続きについて調べておく

ベストな申告タイミングと伝え方

退職の意思を伝えるタイミングは、法律、就業規則、そして人間関係のバランスを考える必要があります。

退職を伝えるタイミングの目安を示すタイムライン図
退職の申し出は、引き継ぎ期間を考慮して計画的に

この図が示す通り、法律(民法)では2週間前とされていますが、
円満退職を目指すなら、引き継ぎ期間を考慮して就業規則に沿うのが無難です。

伝える際は、感謝の気持ちと、やむを得ない事情を誠実に説明することが重要です。

育休手当と失業手当、どちらを選ぶべき?

育休を延長するか、退職して失業手当を受給するかは、非常に重要な判断です。

どちらが有利かは、あなたの状況によって異なります。

育休手当と失業手当の比較図
【図解】育休手当 vs 失業手当 状況別シミュレーション
この図解の根拠データとソース

この比較表は、雇用保険法に定められた各給付金の制度概要を基に、主要な項目を比較したものです。

項目 育児休業給付金 失業手当(基本手当)
根拠法 雇用保険法 雇用保険法
受給額 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(6か月経過後は50%) 離職日の直前6か月の賃金÷180×給付率(50~80%)
受給期間 原則、子が1歳になるまで(最長2年まで延長可) 離職理由や年齢、被保険者期間による(90日~360日)
社会保険料 免除される 自身で国民健康保険・国民年金に加入する必要がある

引用元: 雇用保険法、厚生労働省・ハローワークの各種案内資料

この比較表の通り、受給額や期間、キャリアへの影響などを総合的に比較検討することが重要です。

一般的に、すぐに次の仕事を探す意思がある場合は失業手当が、まだ育児に専念したい場合は育休の延長が適していると言えるでしょう。


育休後の退職に関するよくある質問(Q&A)

最後に、育休後の退職に関して特に多く寄せられる具体的な質問について、一つずつ回答していきます。

育休後に退職する人の割合は?

最新の2015年〜2020年のデータでは、第一子出産後に就業を継続する女性は全体の57.0%です[7]

育休を取得して復帰した後に限定すると、退職する女性の割合は6.9%、男性は2.5%というデータがあります[2]

育休後に退職するデメリットは?

最大のデメリットは、経済的な不安定さとキャリアの中断です。

育休後退職の主なデメリットを示すアイコン図
経済面とキャリア面でのデメリット

特に、正社員として復帰せずに非正規で再就職した場合、生涯年収に数千万円単位の差が生まれるという試算もあります[3]

育休明け1ヶ月退職で失業保険はもらえる?

受給資格を満たす可能性が高いです。

失業保険の受給資格のルールを説明するタイムライン図
育休期間も被保険者期間の算定対象に含まれます

失業保険の受給資格は、原則として「離職日以前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること」です。

育児休業期間中もこの「2年間」に含まれるため、育休前に1年以上雇用保険に加入していれば、条件を満たせます。

育休手当の返金は必要ですか?

結論から言うと、育児休業給付金(育休手当)を返金する必要は一切ありません

これは雇用保険から支払われる給付金であり、復職を前提とはしていますが、
その後に退職したからといって返金を求められる法的な根拠はありません。

育休を取った後の退職は法的に可能ですか?

はい、法的に全く問題ありません。

育児・介護休業法は労働者の権利を保障するものであり、休業後の退職を禁止するものではありません。

復職後の退職は、通常の自己都合退職として扱われます。


「育休後の退職がずるい」の罪悪感をなくす「知識」の大切さ

「育休後の退職は、ずるいことなのではないか」という罪悪感は、多くの人が抱える根深い悩みです。

しかし、客観的なデータを見てみると、その悩みの多くが誤解に基づいていることがわかります。

  • 事実1:
    育休を取得した女性の9割以上は、実際に職場復帰を果たしています[2]
  • 事実2:
    就業継続は今や多数派(57.0%)であり、キャリアを見直すことは特別なことではありません[7]
  • 事実3:
    退職の背景には、個人の責任ではなく、「両立の困難」や復帰後の「やりがいの喪失」といった構造的な問題が存在します[3][5]

あなたが今すべきことは、根拠のない「ずるい」という言葉に惑わされることではなく、

客観的なデータとあなた自身の価値観に基づいて、あなたと家族にとって最善の道を選択することです。

この記事で得た知識が、あなたの決断に確信を与え、自信を持って次のステップに進むための一助となれば幸いです。


引用・出典リスト

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